近年、ITプロジェクトが複雑化するなかで、進行管理の役割を担うPMOの需要が高まっています。PMOの将来性や需要を把握し、今後のキャリア形成に役立てたいとお考えの方もいるのではないでしょうか。
今回は、PMOの概要を紹介したうえで、PMOの将来性・需要が高い理由や市場価値の高いPMOの特徴、備えておくべきスキルについて解説します。併せて、PMOとして働くうえでのポイントや、キャリアパスも紹介するので、ぜひ参考にしてください。
目次
- 将来性・需要が高いといわれる「PMO」とは
- PMOの将来性・需要が高い3つの理由
- 市場価値が高いPMOの特徴3つ
- 将来性の高いPMOとして活躍するために備えておくべきスキル
- 将来性の高いPMOとして働くために|知っておきたいポイント
- 【将来性が高い】PMOが選べるキャリアパス
- まとめ
将来性・需要が高いといわれる「PMO」とは
PMOとは、プロジェクトを横断的にサポートする部門・組織、あるいはPMOコンサルタントを指します。プロジェクトにおけるスケジュール・コスト・品質などを管理するPM(プロジェクトマネージャー)がスムーズな意思決定を下せるように、後方支援を行なうことがPMOの役割です。
PMOによる適切なプロジェクトの進行管理・調整は、成功確度を高めることへとつながります。プロジェクトを成功させるため、外部のコンサルティングファームなどからPMOコンサルタントを招いて支援してもらうケースも少なくありません。
なお、PMOの職種は以下のように大きく3つに分けられます。
職種 | 特徴 |
PMOマネージャー | 全般的なプロジェクトの管理担当者として、戦略策定や予算管理などを行なう。 |
PMOエキスパート | プロジェクトのクオリティを管理する担当者として、ルール策定や情報分析などを行なう。 |
PMOアドミニストレーター | 事務的な業務の担当者として、ドキュメントの作成・更新、スケジュール調整などを行なう。 |
PMOの将来性・需要が高い3つの理由
ここからは、PMOの需要や将来性が高い3つの理由を見ていきましょう。
◇PMO人材の需要が増している
多くの企業がDXを推進しているなかで、ITプロジェクトの牽引、および標準化を図れるPMO人材の需要が増しています。
例えば、企業がオンライン販売の強化に向けて新たにECサイトを導入する場合、導入プロジェクトの管理や進捗の監視が不可欠です。その際、プロジェクトのサポートやガイダンスの役割を果たすPMOの存在が求められます。
一方で、プロジェクトの成功確度を高められるような高度なスキル・ノウハウを持つPMO人材は市場価値が高く、将来性にも期待できるでしょう。
◇ITプロジェクトの多様化・複雑化が見込まれる
前述したDXの推進やAI・IoTなどの技術革新、自動運転といったハードウェアのIT化、あるいはビジネスニーズの変化にともない、ITプロジェクトは今後さらに多様化・複雑化することが見込まれます。その結果、PMOが必要とされる環境が増えていくことが想定されます。
例を挙げると、外国への事業展開を行なう企業の場合、異なる国・地域の言語や法規制、文化などを踏まえたプロジェクト管理が必要です。複雑化したプロジェクトを統括的に管理できるPMOの需要は増す可能性が高いでしょう。
◇IT人材の不足が懸念されている
ITプロジェクトが増加傾向にある一方で、PMOがおもに活躍するIT業界では人材そのものの不足が懸念されています。
経済産業省の調査資料によると、2018年時点ですでに22万人のIT人材が不足しており、2025年には36万人、2030年には45万人と需給ギャップがさらに広がることが予想されています。
事業会社は限られたリソースでITプロジェクトを進行しなければならないため、PMを的確に後方支援してプロジェクトをサポートするPMOは、今後も高い需要が続く可能性があります。
市場価値が高いPMOの特徴3つ
次に、市場価値の高いPMOが持つ特徴を3つ紹介します。
◇コンサルティングファームでの経験を積んでいる
クライアント企業・組織の課題解決に向けて、具体的な戦略や知識を提供するコンサルティングファームでの経験を積んでいるPMOは、市場価値が高い傾向です。
なお、事業会社からコンサルティングファームへ転職したい場合、PMなどの経験を積み、ITプロジェクトで貢献できたことをしっかりとアピールできる人材であれば、転職成功率を高められます。
◇大規模プロジェクトのPMO経験がある
大規模なプロジェクトでPMOの経験を積んでいると、市場価値の高い人材と見なされやすくなります。具体例として、大規模な通信インフラの構築、小売チェーンのシステム統合などのプロジェクト経験が挙げられます。
このようなプロジェクトの経験があると、PMOとしてのリスク管理スキルや、ステークホルダーと調整を行なえるコミュニケーションスキルがあることを客観的に示せるでしょう。
なお、高年収を提示するPMO求人では、一般に3~10年ほどの実務経験者を求める傾向にあります。市場価値の高いPMOは転職市場でも人気が高いほか、フリーランスとして活動する道が開ける可能性もあるでしょう。
◇ビジネスレベルでの英語スキルを備えている
グローバル企業やコンサルティングファームのPMOとして活躍するには、ビジネスレベルの英語スキルを備えている必要があります。海外のクライアント企業や、外国のチームメンバーと仕事をするケースもあるためです。
ビジネスレベルの英語力の目安は、一般にTOEICで700点以上です。ただし、外資系企業の場合は、TOEIC800点以上のレベルを求められることもあります。
英語スキルに長けていれば、海外の文献やニュースなども把握でき、自身の知見を広げることにもつながります。
将来性の高いPMOとして活躍するために備えておくべきスキル
ここでは、将来性の高いPMOとして活躍するために備えておくべきスキルを確認しましょう。
◇マネジメントスキル
マネジメントスキルは、プロジェクトを管理するうえで必須のスキルです。PMOの業務では、プロジェクトの完遂に向けて、進捗や課題、リスクなどさまざまな要素を管理し、調整していく必要があります。
プロジェクトの規模感や内容によって重点を置くべき要素は変わるものの、PMOの業務におけるマネジメントスキルの重要性は特に高いといえるでしょう。
◇コミュニケーションスキル
PMOは、多くのチームメンバーやステークホルダーとコミュニケーションを取りながら、プロジェクトの成功に向けて動かなければなりません。
状況に応じて、経営層への報告やPMへの助言・提案などを実施することも必要です。プロジェクトの関係者とスムーズにコミュニケーションを図れるようにするには、信頼関係の構築が欠かせません。
◇アナリティクススキル
プロジェクトを成功に導くため、PMOには進捗やリスクに関するデータを収集・分析して、意思決定や戦略策定に役立てる「アナリティクススキル」も求められます。
データを分析してプロジェクト支援に役立てるには、プロジェクト管理ツールを活用できるスキルのほか、論理的思考力なども不可欠です。場合によっては、統計学に関する専門知識を備えておくと、より有益性の高いデータ分析が可能になるでしょう。
◇テクニカルスキル
ITプロジェクトを支援するPMOとして、一定レベルのテクニカルスキルは持っているべきです。具体的には、開発にかかわるプログラミング言語、要件定義などのスキルが挙げられます。
これらのテクニカルスキルを備えていれば、現場の状況把握やメンバーへの指示を行なう際にスムーズにやり取りでき、PMOとしても信頼を得やすくなるでしょう。
PMOに必要なスキルについてより詳しく知りたい方は、ぜひ以下の記事をご覧ください。
PMOに必要なスキル7選!職種別のスキルセットやキャリアプランも紹介
将来性の高いPMOとして働くために|知っておきたいポイント
ここからは、将来性の高いPMOとして働くために知っておきたいポイントを3つ紹介します。
◇AIの躍進による業務の自動化
今後、AIの躍進によって、PMOの業務の一部が自動化する可能性があります。具体的には、スケジュール管理やリスク分析、タスクの最適化などの業務が該当します。これらの管理業務は、AIを活用して効率化されるかもしれません。
そのため、PMOの働き方としては、戦略的な意思決定のサポートなど、対人的なコミュニケーションが不可欠な業務に重点を置く方向性へとシフトすることが予想されます。
市場価値の高いPMOとして活躍し続けるには、AIでは代替できない領域で手腕を振るう必要があります。優れたコミュニケーションスキルや問題解決能力を有する人材であることが、ますます重要になるでしょう。
◇アジャイル開発の浸透による役割の変化
従来、国内では上流工程から順に「設計・実装・テスト・リリース」のプロセスを進めていく「ウォーターフォール開発」が主流でした。しかし、近年はシステム・ソフトウェア開発の仕様変更などに柔軟に対応できる「アジャイル開発」に取り組む企業が増えつつあります。
アジャイル開発は、開発を機能単位で素早く進められるのが特徴です。この開発手法が浸透すると、スケジュールやリソースを管理するというPMOの固定された役割が、チームの生産性や効率性の最大化を目指す役割へと変化する可能性があります。
将来性の高いPMOとして活躍するには、アジャイル開発の原則を理解したうえで、PMOの業務に活かす必要があるでしょう。
◇PMOへの期待から生まれる責任やプレッシャー
プロジェクトを成功に導くための重要なキーパーソンとして、PMOに対する期待値は高い傾向にあります。PMOの仕事としてのやりがいが大きい一方で、一定の責任やプレッシャーを負うことも理解しておきましょう。
PMOはプロジェクトの一連の工程を俯瞰的に管理し、問題が生じた場合は即座に対応しなければなりません。場合によっては、多方面のステークホルダーとの調整・交渉を行なう必要もあります。これらの仕事に大きな責任やプレッシャーを感じてしまう方もいるかもしれません。
昨今のPMOは、自身のストレス状態を適度にコントロールする「ストレスマネジメント」のスキルも必要とされています。このスキルを身に付けてストレスを適度に保つことで、健康的に長く働けるでしょう。
【将来性が高い】PMOが選べるキャリアパス
続いて、PMOとして選べるキャリアパスを3つ紹介します。自身に合った働き方を見つけるためにも、ぜひチェックしてみてください。
◇社内での昇進
PMOとして経験を積んで経営スキルを習得すると、上位の役職に就けるケースがあります。例えば、技術戦略の意思決定や技術経営を担う「CTO(最高技術責任者)」、あるいはビッグデータなどを活用してマーケティング活動の推進役を担う「CIO(最高情報責任者)」といった役職が挙げられます。
また、ITシステムの導入などをサポートする「社内スペシャリスト」としての地位を築ける場合もあるでしょう。
◇コンサルティングファームへの転職
PMOとして磨いたスキルを活かし、コンサルティングファームに転職できるケースもあります。PMOコンサルタントとして働くコンサルティングファームでは、クライアント企業の課題解決に向けて、プロジェクトの計画立案や進行管理などをサポートする役割を担うため、仕事へのやりがいも見出しやすいでしょう。
◇フリーランスとしての独立
コンサルティングファームのPMOとして培ったスキルや知見を活かす場合、フリーランスとして独立する道も選べます。フリーランスのPMO案件の単価相場は月80万~150万円程度で、年収が2,000万円を超えることもあります。
優れたスキルや豊富な実績を持つフリーランスPMOなら、自身の強みを活かせるPMO案件を獲得できる可能性がアップするため、将来性も高いといえるでしょう。
フリーランスのPMOになるメリット・デメリットや、フリーランス案件の特徴などを知りたい方は、ぜひ以下の記事をご覧ください。
フリーランスのPMOになるメリット・デメリットは?案件の単価相場や求められるスキルも解説
PMOのフリーランス案件の特徴や単価相場とは?必要な能力・知識なども解説
まとめ
PMOの将来性・需要が高い理由として、高度なスキルを持つPMO人材の需要が増していることや、ITプロジェクトの多様化・複雑化などが挙げられます。市場価値が高いPMOとして活躍するには、大規模プロジェクトのPMO経験があったり、ビジネスレベルでの英語スキルを備えていたりすることが重要です。
PMOとして経験・スキルを積むと、社内での昇進やコンサルティングファームへの転職といったキャリアパスを選べるほか、フリーランスとして独立できる可能性もあります。とはいえ、フリーランスとして案件を継続的に受注し、安定的な収入を確保するには一定の労力が必要です。
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